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<Ethernetの基本事項>

LSIに関連したトラブル事例

LAN用LSIを使用すれば規格適合のほとんどの面はクリアできます(メーカによっては規格割れになる場合もないとは言えませんが)。しかし、実際のネットワーク環境は規格がすべてではありません。
規格で明確に定義されていない箇所は、メーカ間でもその挙動がまちまちです。例えばプリアンブル部+SFD部は合計64ビットが標準ですが、何ビットのプリアンブルがあれば実際に受信できるのでしょうか。また、フレーム間ギャップは最少9.6usですが、実際はどれだけ短いフレーム間ギャップまで受信できるのでしょうか。
こうした言わば実力値的な要素は、データシート上に記載されていることはまれですが、メーカー間格差があるのも事実です。

完成度の高い製品を目指すためには、採用LSIの 選定時にこうした規格外の実力値的要素にも気を配るのが重要ではないでしょうか。LSI評価には、その規格適合を確認するのはもちろんですが、発生する可能性のある規格外要素に対する挙動も確認するように心掛けましょう。
Ethernetでは、以下のような項目が該当します。

  1. 規格より小さいパケット、あるいは極端に大きなパケットを最大速度で連続発生させる。フレーム間ギャップを規定より短くする。
  2. 種々のエラーパケットを連続発生させる。
  3. 信号レベルを規定より小さくする、あるいは大きくする。
  4. 送信基準クロックを規定より早くする、あるいは遅くする。

発生障害の想定及びその組み合わせは膨大な量ですので、完全な試験をすることは難しいですが。頑張ってみて下さい。そうした努力は、障害発生の予防になると同時に障害要因の絞り込みにも役立ち、決して無駄にはなりません。
以下に筆者のトラブル経験を参考として紹介しておきます。

ハブにおける事例

一番目は、ハブ用LSIに起因したトラブル事例を紹介します。
ある特定メーカのハブだけ端末を直接接続するとデータ転送ができないというものでした。別のメーカのハブであればOKとのことでしたので、当初は信号レベルの規格不適合による相性問題として調査を開始したのですが、原因は別の要素にありました。

その端末に搭載されていたLANカードから送信されるフレームのプリアンブル部が規格よりかなり短いものだったのです(約32ビット)。このプリアンブルの短いフレームをA社製LSIは受信し、B社製LSIは無視してしまうのです。その結果として、採用LSIの差により挙動の違うハブが存在してしまう訳です。
ユーザの視点に立てば、エラーフレームで無い限り、プリアンブル部が短くてもちゃんと受信できる方が有用であることは言うまでもありません。

LANカードにおける事例

次に紹介するのはLANカードの例です。衝突が多いネットワークで特定の端末だけパケットの受信ロスが多いというものでした。
これも根本原因は別のところにあったのですが、挙動の差はLAN用LSIの特性の差にありました。元々の原因は、あるメーカのLSIからの送信パケットが衝突後の再送時にはそのフレーム間ギャップが規定より短くなる場合があるというものです。
これ自体はバグなのですが、このフレーム間ギャップの短いフレームの受信能力がLSIメーカによって差があるため、ある端末では受信できて、ある端末では受信できないという現象が発生したわけです。

Ethernetのキャプチャー効果

トラブルではありませんが、Ethernetでは衝突発生時の再送処理アルゴリズムに起因したキャプチャー効果と呼ばれる現象が発生する可能性があるので、ここで紹介しておきます。
キャプチャー効果とは、公平であるべき送信アクセス件の調停がある端末に偏る可能性があるということです。
連続して送信可能なたくさんの送信フレームを持った2台のネットワーク端末を想定して下さい。この2台が同時に送信を開始したとします。すると衝突が発生するわけですが、うまくいけば次の回、悪くても数回の衝突の後にはどちらかの端末が送信権を得て送信に成功します。ここで送信に成功した端末を“A”、衝突送信待ちにある端末を“B”としましょう。

送信に成功した端末“A”は次のフレームの送信を開始し、これが衝突送信待ち状態にある端末“B”と再び送信アクセス権で競合します。ところで皆さんは、以前に説明したEthernetにおける再送調停アルゴリズムを覚えているでしょうか。このアルゴリズムでは、衝突回数の多い端末の平均待ち時間は長くなるのでしたね。

つまり、新規にフレームの転送を開始した端末“A”の方が、衝突再送待ちを繰り返している端末“B”より、送信アクセス権を得る確率が高いのです。ここで再び端末“A”が送信アクセス権を得ると端末“B”は衝突回数が累積してしまって、更に送信アクセス権を得難い状況に追いやられれてしまいます。これが繰り返されると結果として端末“A”は、端末“B”より優先的なアクセス権を持ってしまうのと同じことになるのです。

このキャプチャー効果が実際の環境でどの程度意味を持つのかはケースバイケースで判断できませんが、可能性のある一つの現象として覚えておいて損はないでしょう。ネットワーク端末のデータ転送能力が高い程キャプチャー効果は起こりやすくなりますので、ネットワーク端末の能力向上が著しい昨今、身近な現象としてその存在がクローズアップされてくるかも知れません。

Ethernet関連のケーブル

Ethernet関連のケーブルは、多くのケーブルメーカーから規格適合品が標準品として供給されていますので一般ユーザが詳細仕様を気にする必要はありませんが、その主な要求仕様を図18にまとめておきます。

図18 Ethernet/IEEE 802.3関連のケーブル仕様

図18 Ethernet/IEEE 802.3関連のケーブル仕様

また、ツイストペア線に関して、そのカテゴリ分けを図19に示しておきます。最近では、100Mbpsまで使用できるカテゴリ5のツイストペア線が敷設の中心となっています。

図19 UTPのカテゴリ種別

図19 UTPのカテゴリ種別

ツイストペア線における重要な特性は、減衰量と近端漏話減衰量(NEXT: Near End Cross Talk)です。減衰量は信号レベルに影響し、近端漏話減衰量はノイズの主な原因になります。この両者の差が、SCR(Signal to Cross Talk Ratio)と呼ばれ、伝送路のSN比を想定する上での一つの指針となります。SCRは周波数が高くなるにつれて減少傾向にあり、これによって使用上限周波数が決定されます。

ケーブルに関しては、よほどの粗悪品でない限り極端なメーカ間格差はありませんが、LANにおける不具合の大半はケーブル部分関係が占めるとも言われています。もちろん、ケーブル自体よりもコネクタやトランシーバの取り付け工事に関連した不具合が多いのですが、たかがケーブルされどケーブルです。ネットワークを支える根幹部分であり、最重要アイテムであることを再認識して下さい。

信頼のおけるケーブルと信頼のおける設置作業が、信頼のおけるネットワーク構築の第一歩です。
米国では、電話・ネットワーク関連のビル内における配線工事のガイドラインとして、ツイストペア線だけではなく光ファイバまで含めたものがANSI/TIA/EIA-568A Commercial Building Telecommunications Cabling Standardとしてまとめられています。その解説は省略しますが、一度目を通されることをお奨めします。

 

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